学力下位層に対する指導について
1. 川崎寺子屋食堂における教育の目的と特長
- 学校の授業が学力下位層の生徒に対して日常的に有効に機能するように、理解の前提条件となる基礎力を学校外で補完するコーピング・プログラムを提供する。
- 学習の真の目的である「社会で生き抜くための力」を体感させることによって、寺子屋食堂卒業後も学習習慣が維持できるエートスを養う。
- 相対評価による劣等感から脱し、自発的な目標を設定し達成する過程において自尊心と人間関係構築力を身につける。
2. 学校教育が学力下位層に対しては効果的に機能しないどころか、学年が進むにつれて学力格差が拡大してしまう3大原因
- カリキュラムの問題
毎回難度が高まる一方方向の授業では、その日の授業を理解する必要条件がそろっていない生徒にとってはそもそも理解できない。 - 教育形態の問題
多人数の一斉授業では学力中位以上の生徒の理解速度に合わせて進行するため、学力下位層の生徒は付いて行けない。 - 学習の目的が不明確
子供にとって最大の関心事は人間関係であるが、学力下位層にとって勉強は劣等感と自己嫌悪を高める元凶でしかない。強制的に学習習慣をつけさせる方法も評価の仕方の改善も根本的な学習意欲の喚起にはつながらない。
3. 川崎寺子屋食堂の教育システムについて
- 学習体系図に基づく学力診断テストを実施し、できるところまで遡ってやり直す。コーピングの最初のプログラムは、「できる喜び」を繰り返し体験させることである。
- 学力に応じて個別に指導を行う。指導員の人選と研修を徹底することによって、学力下位層の子供の心理に精通し、具体的な声掛けの仕方を開発する。
- 個人ファイルを作成し、PDCAサイクルとKPIによる情報の可視化と共有を行う。目標の設定―学習内容と期限の明示―学習履歴と成績推移表の記録―分析と計画の修正。
4. 教育内容と進め方について
国語と算数を対象に、Hop―Step―Jumpの3段階で学力レベルを1年以内に中位以上に高めて行く。
- Hop段階:学習意欲の喚起
- 算数
- 全学年で学習開始時に100マス計算を実施し、集中力を高めるとともに集団のパワーを発揮させる。
- 国語
- 教育漢字1006字と文化庁熟語例の読みと書きを小学1年の漢字から順にマスターさせる。音符と意符による漢字の成り立ちを知ることによって面白さを体験する。
- Step段階:基礎力の補完
- 算数
- 小学1年からの教科書の単元末問題を学力診断テストの結果をもとに、できなくなったところまで遡って丁寧に類題演習を重ねて行く。
- 国語
- 文章読解の方法を確認し、さまざまなジャンルの本を読みながら要約の手順とと主題を追う力を修得する。
- Jumpの段階:学習習慣の確立
- 算数
- 学んだことを実生活で使うことによって、算数をテストのために勉強するのではなく社会を生き抜く力を養うためにあるという学習目的を知る。
- 国語
- 人の言いたいことを的確に把握することと、自分が言いたいことを論理的に伝えることの楽しさを実感させる。
【補足】一般的に学習に向かうモチベーションは次の3つである。
(1)勉強は面白い
(2)自分にもできる
(3)勉強は役に立つ
川崎寺子屋食堂では、学習に対するモチベーションを本質的な次元から喚起することによって学習習慣を定着させることとする。
特定非営利活動法人川崎寺子屋食堂 コンプライアンス規程
(目 的)
第1条 この規程は、活動を行う上で基本原理となる特定非営利活動法人川崎寺子屋食堂(以下、当法人という)のコンプライアンスに係る基本事項を定め、
一貫した方針の下に公正、明朗な運営の確保に資することを目的とする。
(定 義)
第2条 この規定において「コンプライアンス」とは、法令、定款及び特定非営利活動法人倫理(以下、「法令等」という)を遵守することをいう。
(会員の責務)
第3条 会員は、前条の定義をふまえ、法令等を誠実に遵守することはもとより、社会人としての良識と責任をもって業務を遂行しなければならない。
「会員」とは当法人の正会員及び学習・運営・食堂のボランティアの総員をいう。
(コンプライアンス体制)
第4条 コンプライアンス実行の最高責任者は、理事長とする。
2 コンプライアンスを適切に行うために、最高責任者の下にコンプライアンス委員会を設置する。コンプライアンス委員会は、当法人のコンプライアンスについて統括する。
3 コンプライアンス委員会に食事提供および学習指導への対応を目的とする部会を置くことができる。
(コンプライアンス委員会の構成)
第5条 コンプライアンス委員会の構成は、以下のとおりとする。
1 委員長:副理事長
2 メンバー:担当理事
3 監査:顧問弁護士
(コンプライアンス委員会の役割)
第6条 コンプライアンス委員会は、以下の役割を担う。
1 平常時
(1)コンプライアンスに係わる方針、施策、年次計画の策定
(2)新たなコンプライアンス事項に関する対策の検討・決定
(3)コンプライアンスに係る情報管理に関する対策の検討・決定
(4)コンプライアンス対策(対策の優先順位付け)及び対策に対する定期的な見直し
(5)事業、その他業務に係わる個別コンプライアンス事項の管理状況の把握
2 不祥事発生時
(1)不祥事発生時の緊急対応
(コンプライアンス委員会の開催)
第7条 コンプライアンス委員会は、原則として年1回開催する。但し、不祥事発生時等、必要がある場合は随時これを開催する。
(教育訓練)
第8条 会員のコンプライアンス能力の向上を図るため、個人情報、ハラスメント、体罰を中心として教育・訓練・研修等を、継続的に実施する。
(通報の義務)
第9条 会員は、他の会員が法令等に違反する行為を行っていることを知った時は、速やかに委員長に通報しなければならない。この場合、通報者に不利益な扱いをすることを禁止する。
(免責の制限)
第10条 会員は、次に掲げることを理由として自らが行なった法令等に違反する行為の責任を免れることはできない。
(1)法令等について正しい知識がなかったこと
(2)法令等に違反しようとする意思がなかったこと
(3)他の会員の指示・教唆により行なったこと
(4)当法人の利益を図る目的で行なったこと
(主要なコンプライアンス事項等の開示)
第11条 当法人は、主要なコンプライアンス事項及び取組状況を、事業報告書その他により適切に開示する。
(主要なコンプライアンス事項等の開示)
第12条 当法人の運営に大きな影響を与える不祥事が発生した場合、本規定第13条ないし第15条の定めにより対応する。
(主要なコンプライアンス事項等の開示)
第13条 発生した不祥事を、その影響度に応じて次の2段階に区分する。
レベルⅠ:当法人に著しい損害、もしくは事業に甚大な影響を及ぼすと想定される事態、本法人および各教場が一体となって全法人的な対応を必要とする事態、又はマスコミ(新聞、TV等)への特別な対応が求められる事態をいう。
レベルⅡ:事業活動に一定の影響はあるものの、適切な対応をとればレベルⅠまでには至らず、発生場所で対応可能な事態をいう。
(コンプライアンス委員会による一元指揮)
第14条 発生した不祥事がレベルⅠに該当する場合、理事長がコンプライアンス委員会を招集し、コンプライアンス委員会のもとで対応する。なお、レベルⅡに該当する場合、発生場所で対応した後、可及的速やかにコンプライアンス委員会に報告する。
(懲戒処分の種類)
第15条 当法人は懲戒委員会を設置し、発生した不祥事のレベルに応じて、法令等に違反した会員に対して、次の1または2の処分を科する。
1 けん責 始末書の提出を命じて将来を戒める。
2 除名 当法人の会員資格をはく奪する。
(懲戒委員会)
第16条 懲戒委員会は理事会が選任する5名の懲戒委員で構成する。
(懲戒手続き)
第17条 懲戒処分を科する場合には、懲戒委員会の審議を経て行う。
2 懲戒委員会のおける議決は、懲戒委員の過半数で決するものとする。
3 懲戒処分の対象となった会員は、懲戒委員会において、弁明の機会を与えられる。
(事後対応及び再発防止)
第18条 事態の収束後は、当該事案に係る理事が中心となり、速やかに事態発生の原因分析、緊急対応上の問題点、再発防止策等を取りまとめ、コンプライアンス委員会に報告する。